・・・新聞第一ページ最下段左すみの俳句欄に載せられた。自分も先生のまねをしてその新聞を切り抜いては紙袋の中にたくわえるのを楽しみにしていた。自分の書いたものがはじめて活字になって現われたのがうれしかったのである。当時自分のほかに先生から俳句の教え・・・ 寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」
・・・ちょうどエスカレーターの最下段に押して入れてやれば、あとはひとりで、少なくも二階までは持って行ってくれるのと同じようなものである。このごろは中学や高等学校の入学がだいぶ困難になって来たが、それでも一度入学さえすればとにかく無事にせり上がって・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・これはおそらくたとえばスコアーの上段をフリュート下段をヴァイオリンで行くのと、それが反対になるのとでまるでちがった音楽になりうるのと似たことになるであろう。おそらく芭蕉は少なくも無意識にはこれらの事理に通暁していたではないかと想像される。そ・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・使は下段に進んで、二度半の拝をして、右から左へ三人並んだ。上々官金僉知、朴僉知、喬僉知の三人はいずれも広縁に並んで拝をした。ここでは別に書類を捧呈することなどはない。茶も酒も出されない。しばらくして上の使三人がまた二度半の拝をすると、上々官・・・ 森鴎外 「佐橋甚五郎」
出典:青空文庫