・・・ 明治維新は本当のブルジョア革命でなく、昔の殿様である封建領主、下級武士たちの権力に未熟な産業資本が結合したもので、土地小作の関係は実に古い封建制度のままもちこされた。そのために日本の農村の貧困は甚しく農家から貧乏のために一年幾ら、二年・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・が生徒の親の店へ物の融通を云いつけるのはその社会で例のないことではないのだろうから、何も愧しい思いはないのだろうが、無いと云ったそのものが在る、しかもどっさり在るということは如何にも具合がわるかった。下級の先生は、むっつり顔で何か云いわけし・・・ 宮本百合子 「「うどんくい」」
・・・例えばどんなに税が高くあろうとも妻や妹はウビガンの香水を常用しているという部分の人々にはどういう感じをおこさせるかしらないが、都会の人口の大多数を占める下級中級の若いサラリーマン、勤労青年たちが、いささかの慰みとしてアパートの部屋でかけて聴・・・ 宮本百合子 「カメラの焦点」
・・・日本の社会生産と経済とは、封建のままの土地制度、耕農手段を基礎としていて、一握りの進歩的大名と、革新的下級武士と、外部からのヨーロッパ、アメリカとの力が結合して倒幕運動がおこされ、日本の近代企業、銀行、会社の創立は、すべて、政府の上からの保・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・この資金の一部で五ヵ年計画完成後には労働者および下級勤人の子供百五十万人が学齢以前の保護を受けるようになるだろう。 *一九二九年ほとんど千五百万人の子供がСССРにいた。 勤労者によって構成されているソヴェト社会の実践上、この幼児・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・明治維新というものがその一面に下級武士の大きい力のあらわれをもっているという事実が、こういう点にも見られるのである。従って詩吟という一つの朗吟法が持っているメロディーは非常に緊迫した悲愴の味であり、テムポから云えば当然昔の武士が腰に大小を挾・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・後、社会の事情の変遷につれ、中間層、下級サラリーマン、インテリゲンツィアの生活条件の変化によって大衆という内容はひろくなった。自身の日常の生活を自身の働きで支えている一般の勤労生活者をふくむものとして理解されて来ている。 今日、こういう・・・ 宮本百合子 「今日の文学に求められているヒューマニズム」
・・・ 和久井門平 小市民の下級知識労働者が、市の職業紹介所へ行って、かかりの者の官僚主義や、得たいのしれぬ情実採用に痛めつけられ憤る心持を、この作者は細々と書いている。憤りを押えて下手に出る求職者の心もちなどこくめいに書かれているが、作品・・・ 宮本百合子 「小説の選を終えて」
・・・彼は下級武士で、やがて武士をやめて俳諧の道に入った。芭蕉の風流というものの規準が極端に小さい経済的基礎の上に立っていることは、意味ふかいことである。芭蕉は、小舎の柱に一つの瓢箪をつるし、そのなかに入れた米とそのほかほんの僅かの現世的経済の基・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・殆ど時を同じくして、農林大臣は、米の専売案を語り、農林省の下級官吏たちは大会をもって、食糧の人民管理を主張した。この対照は、新聞をよんだすべての人々に、深い関心をよびさましたと思う。農林省につとめていれば、食糧関係のあらゆる行政の網が分って・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
出典:青空文庫