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・・・馬は、滑らないように下面に釘が突出している氷上蹄鉄で、凍った雪を蹴って進んだ。 大隊長は、ポケットに這入っている俸給について胸算用をしていた。――それはつい、昨日受け取ったばかりなのであった。 イワンは、さきに急行している中隊に追い・・・
黒島伝治
「橇」
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・・・それは口を大きくあいて舌を上あごにくっつけておいて舌の下面の両側から唾液を小さな二条の噴水のごとく噴出するという芸当であった。口から外へ十センチメートルほどもこの噴水を飛ばせるのはみごとなものであった。一種のグロテスクな獣性を帯びたこの芸当・・・
寺田寅彦
「相撲」