・・・ことと不可分である故に、なおさら物識りにはなり難い事情があるのである。 読書とは単なる知性の領域にある事柄ではない。それは情意と、実践との世界に関連しているのである。特に東洋においては、それはむしろ実践のためにあるものなのであった。・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・風月ではドイツ人のピアニストS氏とセリストW氏との不可分な一対がよく同じ時刻に来合わせていた。二人もやはりここの一杯のコーヒーの中にベルリンないしライプチヒの夢を味わっているらしく思われた。そのころの給仕人は和服に角帯姿であったが、震災後向・・・ 寺田寅彦 「コーヒー哲学序説」
・・・詩というものが今日の現実社会状勢中どのような位置にあるかというD問題と不可分に連関している。詩は歌謡との結びつきで、文学の形態としても一番集団の感情、意志表示に便宜であり、その性質から実に端的に率直に、詩の社会的性格や詩の背後にある集団の表・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
出典:青空文庫