・・・あとから隊宛に品物を送ることが出来れば、もうしめたもので、それが出来る時は私がやっきになって持たせてやりたいとあせったものも不用となって目出たし目出たしのわけです。忍耐強い子だから根が切れてどうこうということはありませんが、人間の貴重で精緻・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・どうかそのおつもりで、不用の袷類を下げてお置き下さい。 さむくなりましたが、今年は去年より概して暖いのではないかしら。きょうなどなかなかおだやかな日です。 盲腸など大変きらいです。少しひまなとき、そして健康状態のいいとき、切ってとっ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・お花といわれると私たちは仏さんのお花という連想があったり、お花のけいこにつながったり、花そのものには不用な形式的なものをつけ加えられる。子供のための文学の作者のよい感覚は、子供の感情再現の内容をつくる、そういう用語の上にも敏感、率直、清潔で・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
・・・故に、作家は作家であれば足りるのであって特別な現実を観る眼、世界観等というものは不用である、作品は作品である限り進歩的な役割を自ら果すものであるという風な論がリアリズムについてなされた。このことに連関して、バルザックは王党派であったにも拘ら・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・に就ても、上述のような紹介の角度によって、さながら新たなヒューマニズムの内容は、非人間的暴力に反対するという一般傾向において平面的に無差別につらなっているので、その推進力としての指導方向を不用としているかのようにうけとられた。従来のプロレタ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・米国婦人が、不用な奢侈品に良人の体中の油汗を搾らせながら、祈祷の文句を誦し、人道の為に、彼女等が殆ど一人として云わない事はない Humanity の為に是非を喧しくするのが一種の常套であると共に、日本の現代の常套は女性の経済的独立と称し、職・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・民主主義の方向が、民主主義文学者に明確に把握されていたならば、そして、新鮮な決意があるならば、ファシズムに抵抗を感じている文学者たちの会合として、一献は不用のものであった。このことについて、当時、病気で出席さえ出来なかったわたしが、ここでふ・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ 其位なら何故、私は、彼女のそばによって、一つの銀貨と引かえに、不用な画帖を受けとってやらなかったか? 私は、先一度そうした。そして、もう二度とは繰返すまい感銘を受けたのであった。 彼女が、愛嬌に薄い頬につくる微笑が、どんなにその唇・・・ 宮本百合子 「小景」
・・・こうして置けば、女中がランプの掃除に使って、余って不用になると、屑屋に売るのである。 これは長々とは書いたが、実際二三分間の出来事である。朝日を一本飲む間の出来事である。 朝日の吸殻を、灰皿に代用している石決明貝に棄てると同時に、木・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・ドイツでも、神学を修めるのは、牧師になる為めで、ちょっと思うと、宗教界に籍を置かないものには神学は不用なように見える。しかし学問なぞをしない、智力の発展していない多数に不用なのである。学問をしたものには、それが有用になって来る。原来学問をし・・・ 森鴎外 「かのように」
出典:青空文庫