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・・・その中に二銭の団洲と呼ばれた、和光の不破伴左衛門が、編笠を片手に見得をしている。少年は舞台に見入ったまま、ほとんど息さえもつこうとしない。彼にもそんな時代があった。……「余興やめ! 幕を引かんか? 幕! 幕!」 将軍の声は爆弾のよう・・・
芥川竜之介
「将軍」
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・・・廻しに俊雄は成仏延引し父が奥殿深く秘めおいたる虎の子をぽつりぽつり背負って出て皆この真葛原下這いありくのら猫の児へ割歩を打ち大方出来たらしい噂の土地に立ったを小春お夏が早々と聞き込み不断は若女形で行く不破名古屋も這般のことたる国家問題に属す・・・
斎藤緑雨
「かくれんぼ」