すこし物ごとを真面目に考える今日の世代の若い人たちが、自分たちの結婚生活に入ろうとするとき、生涯向上する情熱を喪わない夫婦として生きたいと願わない人はおそらくないだろうと思う。 この願いは、或る意味では良人になろうとす・・・ 宮本百合子 「家庭創造の情熱」
・・・そういう存在として見られ育てられた学生たちは、家庭にあってやはり一種の若き世代としての尊厳と理想とを持していただろうと思う。新しい社会に、新しい家庭生活というものをつくり出してゆく者として自分たちは名誉ある義務と責任とを負わされている自覚を・・・ 宮本百合子 「家庭と学生」
・・・その偉力の美しさ、無限の鼓舞がそこにある。世代から世代へ渡る橋桁は人間の心のその光で目釘をうたれ鏤められていることを彼等は遂に見失わなかったのだ。 宮本百合子 「彼等は絶望しなかった」
・・・民主日本の新らしい潮はそれらの条件にさし加って、若い世代を中心とした文化の動きが見られるようになって来たというのが、一応の事情である。 けれども、この文化の中心の全国的な散開という新しい事実には、それだけの現象にとどまらず、明日の日本に・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・ケーテが民衆の生活を描く画家として属していた歴史の世代が、ドイツにおける社会民主党の擡頭期とその急速な分裂の時代であったことはケーテの芸術のこの特徴と関係が深い。 ケーテが日常生活から題材をとって描き出しているスケッチには、感動させずに・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・ 若い世代は、あらゆるものを積極にうけいれて、自分たちの幸福のために活かして行くべきだと思う。これまで常識の中に欠けていた結婚の生理に関する知識や優生の知識が、この頃いろいろなところで語られているとすれば、それは躊躇せず生活というものを・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・そのひねくれの存在権は、世代的なものとして主張されているのである。 これらは、すべて非常に心理的である。それらが心理的であるということに問題を生じるのは、これらの心理的な現象をとく力は、窮極においてその心理の枠内にはありえないのだという・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・それがより若い文壇の世代の足を埋めているばかりか、不可避的にそれらの文学の読者であるよりひろい人民層の中から新しく別個の社会的素質をもってのび立って来ようとしている民主的な文学の芽生えさえも、その成長を歪め、畸型にする作用を及ぼしている。い・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・武田氏は景憲十一歳の時に亡んだのであるが、景憲の父の世代に属する武田の遺臣のうちには家康の旗下についたものが多く、景憲はそれらの人たちからいろいろなことを聞いたであろう。書いた時期は慶長の末ごろ、十七世紀の初めと推定せられている。 この・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・これはあるいは漱石に限らず私たちの前の世代の人々に通有な傾向であったかもしれない。私の父親などもそういうふうであった。私は父親から愛情を現わす言葉などを一度も聞いたことはない。言葉だけを証拠とすれば、父親には愛がなかったということになるが、・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
出典:青空文庫