・・・けんかは両成敗なはずだのに、と軍国主義という社会悪をひとてに負わされて不満な人々のこころもち。当時のドイツにみちていた男女のあらゆる種類の不満と悲しみを、武装解除させられたドイツの軍人たちの傷けられた名誉心と結合させ、ドイツ民族の名誉恢復、・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・じゃあつまり理窟は五分五分で喧嘩両成敗とは行かないんだな、幹部派なるものの正体がそういうんじゃ。――実際階級闘争に従っているプロレタリアートは、はっきりここでは云いかねるほかの事実もあって、夙に文芸戦線が自分達の味方でないことは知ってる・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
・・・若いエネルギーの鬱積があふれて、彼らの教室からはみだしたとき、大衆的な行動のなかには、「喧嘩両成敗」というべき事態のおこることもあるでしょう。行きすぎとか誤解とか、ことのはずみ、というものは社会生活のどこにもありがちなことです。若い世代に対・・・ 宮本百合子 「若き僚友に」
・・・昔から喧嘩両成敗という言葉がある。国際間の戦争にしても必ず相手はあるものを、なぜ日本にばかりに戦争犯罪国の責任が負わされるのであろうか。それは日本が敗けたから、勝った側から、勝った勢いでそのような道徳責任までを負わされるのではあるまいか、と・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫