・・・ この小説の試みは中絶された。そして一九三三年の秋もおそくなってから「小祝の一家」という短篇小説がかかれた。夏の間にこころみられていた作品とは題材もテーマもちがっていた。当時文化活動に献身していた一人の同志の健気の生活から感銘された作品・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・さもなければ、緊張と中絶との全然受動的なくり返しで、かえって気が疲れるのである。 ガアガアと反響のつよい建物中をあれ狂っていたラジオが消えると、ホッとした休安を感じつつ、ある日曜の午後、私はかつて音に関して自分の注意をひいたことのある一・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・ 湯ざめがして来てさむいのに、海のことを書いていて猶寒い。あなたはもう六時間ばかりするとお起きになるでしょう。よくお眠り下さい。たのしい夢ならば見るように。 中絶してきょうはもう三月の十七日です。一つの手紙でこんなに永くかかるのは珍・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・徳永さんの御都合で中絶した面もあるでしょうが、ともかくそれは中断されたままになりましたし、だいたい、評論にしろ、どうしても、どっしりと百枚二百枚というものをのせきることができません。薄い一冊の雑誌に、そうとう変化も与え、文学の各方面の話題に・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ 病気は病気であるという事実にたって処理しながら、わたしが仕事を中絶しないのは、階級的な「作家の資格において」民主革命の課題は文学の仕事そのものによってどうこたえられてゆくものか、革命を人間の事業としてどのように肉づけ得るかという一つの・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・を『婦人之友』に連載中、検挙によって中絶。一九三三年二月二十日。小林多喜二が築地署で拷問虐殺された。通夜の晩に小林宅を訪問して杉並署に連れてゆかれたが、その晩はもう小林の家から何人かの婦人が検束されて来ていて、入れる場所・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・としてかきはじめられ、情勢圧迫によって中絶したこの長篇は、現在第三部まで進んだ。二・二六事件をさしはさんで、ファシズムと戦争に洗われる上流生活の様相と、その中におのずから発展を探る若い世代の歴史的道ゆきを辿ろうとされている。 野上彌生子・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・を書いている中に、作家としていろいろの批評に対するがんばりのことがある。林が「作家はガンコでなければならぬ」といったのを、当時「阿蘇山」を中絶し「ファッショ」を中絶した徳永が、基本的線に沿おうという努力のある限り作家は批判に圧倒されずガンば・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・が発表されたのであったが、やがてその創作と提唱が中絶して、今日に至ったのである。 二年を経て現れた今日の「新胎」は、ある意味でハッピー・エンドの小説である。「冷酷聰明な科学者の態度」から「技術的知識人の生活と医学的ヒューマニズムのために・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・呼び醒まされた一定の感興はそのために中絶され、何となし物足りなさが残される。感傷的に一つ一つの子供の顔の面白さに足をとられてゆくことは不必要だろうけれど、その瞬間の対象とそれをみるものの感情とがもとめるだけのゆとりは計量されなければならない・・・ 宮本百合子 「「保姆」の印象」
出典:青空文庫