・・・ 婦人の修学はかなりまで自由にやらせる事に異議はないようだが、しかしあまり主唱し奨励する方でもないらしい。「他の学科と同様に科学の方も、なるべく道をあけてやらねばなるまい。しかしその効果については多少の疑いを抱いている。私の考えでは・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・そのおかげで、それまではこの世における颱風の存在などは忘れていたらしく見える政治界経済界の有力な方々が急に颱風並びにそれに聯関した現象による災害の防止法を科学的に研究しなければならないということを主唱するようになり、結局実際にそういう研究機・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・プランクは物理学を人間の感覚から解放するという勇ましい喊声の主唱者であるが、一方から考えると人間の感覚を無視すると称しながら、畢竟は感覚から出発して設立した科学の方則にあまり信用を置きすぎるのではあるまいか。もし現在の科学の所得は、すでに科・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
・・・ しばしば例に引く科学主義工業の主唱者は、高賃銀低コストを目標としているのであるが、本年の春、ある村で作業場の賃銀が村の労銀の水準に対して高すぎるという苦情が出たことが報告されている。村の労銀というのは恐らく従来の救済工事の日当や日傭労・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・婦人の政治参加の問題どころか、戦争に熱中した政府は戦争に対する人民の批判や疑問を封鎖するために、近衛首相を主唱者として、政党を解消させ、翼賛政治会というものにして、議会そのものの機能を奪った。婦人運動の各名流たちは、「精神総動員」に参加して・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・折から、かつてはプロレタリア文学運動の主唱者の一人であった林房雄氏等から旺に文芸復興の叫びがあげられた。 この文芸復興の叫びには、プロレタリア文学の仕事に当時従っていた人々の中から呼応するものが現れたのみならず、ブルジョア文壇の数年来沈・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・そして、この不安の文学の主唱者たちは、不安をその解決の方向にむかって努力しようとする文学において唱えず、従来人々の耳目に遠かったシェストフなどを引き出して、不安の裡に不安を唱えて低徊することをポーズとしたのであった。 河上徹太郎、小林秀・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・、軍協力文学を主唱したのは林房雄であった。こんにち、彼の「大人の文学」の内容は占領下日本に時めく四十代の「大人」をもてなし、たのしませる好色ものや息子ものとなった。あのころも今も、「大人の文学」は、そのときどきの勢に属して戯作する文学であっ・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・そうしたら七十二歳の老人が主唱で更に「外套無し」を宣伝しはじめているというニュースが新聞に出ていました。 この間東北の或る地方へ旅行したひとの話に、そこの町ではバスの運転手が若い女になっていたそうです。バスの車掌さんはどこでも若い娘さん・・・ 宮本百合子 「二人の弟たちへのたより」
・・・ 事情は推移して、プロレタリア文学時代は過ぎたのであったが、この文学を押し流した時代の波は、純文学を主唱した知識人の社会的ありようにも激しく荒っぽい動揺を加えた。そしてそのひどい震盪は、純文学の枢軸であった人間としての自我の拠りどころを・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
出典:青空文庫