・・・反映論風に唯物史観が俗流化されて一般に流布されているため、青年の多くのものは、人類史的規模の中で主体的に自己の人間性の積極性をつかまず、何しろこの世の中で、と、現代の情勢に万端の責任を転嫁して、卑俗な事大主義の生きかたをしている、それが誤り・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・自身がいわばすでに功成り名をとげた人々であるそれら大多数の婦人たちは、政治的に、すなわち客観的に現実的に社会現象を判断し対処してゆく能力は欠いていて、事大的な追随を政治的な態度と思いあやまって、結果としてはかえって、時局を漫画化する登場人物・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・往年、その事大主義的な天質に従って学生運動の頭領となった一人の男が、同じ天質に従って今日は文化に対する統制の旗ふりとなっている現実である。小林多喜二的なものや芥川龍之介的なものが、発展的に批判されなければならないのは、もとより明かであるが、・・・ 宮本百合子 「数言の補足」
・・・孜々として鼻息をうかがっているものなのだそうであるが、リオンスはそういう皮肉そうな言葉づかいでとりもなおさず自身の事大主義的な性根を暴露しているのである。 そうかと思うと、勝野金政の小説がのっており、私はこの小説がどんな意企で、なんのた・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・自分の分らない技術によって組立てられている世界、そしてその芸術は莫大な金銭によってあがなわれ、大家といわれているとき、文化感覚の中にある卑屈な事大主義が社会人として正直な、しかしそれは素人の批評である批評をひかえめにさせる。そのために大局か・・・ 宮本百合子 「ディフォーメイションへの疑問」
・・・紙のないこと、割当が商業主義、事大主義に支配されている上に、この頃は民主的出版物への割当削減があらわれていること。相も変らず紙屑のようなエログロ出版が横行していること、文学者に対する税がお話にならない高率で、殆ど収入の八五パーセントもとられ・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・しかし、文壇というものがもしあるなら、或は読者の事大主義というものに立っていうならば、「確立した地位」は必ずしも、人間らしい地位でもないし、明日の保障をうけた歴史の前進に伴う地位でもない。或は「悲しきかかし」の別名かもしれないのである。・・・ 宮本百合子 「俳優生活について」
・・・私たち女が、目前の出来上っている力にだらしなく屈しては、ろくなことはない。事大主義にまけない、それが民主の第一歩であることを、私たちは心得ているのである。 第二に、婦人は婦人へ、ということも眉つばものと思われる。主人が戦犯で資格がないの・・・ 宮本百合子 「婦人の一票」
・・・自主的な批判力のまだつよめられていない日本の社会の心理に、半封建の精神の特徴である権力追従を恥じない事大主義が横行している。国際的という名をかりて。民主的という名をかりて。そして世界平和という名をかりて。そして、この風潮は事大主義によって権・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・否、或は、他の多くの作者が何の抵抗をも示さず頭から現実の事大勢力に屈服しているに対して、人及び芸術家としての山本有三氏は一応矛盾をも指摘し、それに抗議せざるを得ない人間の真情をもとりあげ、而して後、一般の温順な市民がそうである通り根本的な妥・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫