・・・しかし流石にその二三の作品だけは、ニイチェでなければ書けない珠玉の絶唱で、世界文学史上にも特記さるべき名詩である。特に「今は秋、その秋の汝の胸を破るかな!」の悲壮な声調で始まつてる「秋」の詩。及び鴉等は鳴き叫び風を切りて町へ・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・お前たちの学校の上を二三べんあるいたし谷底へ二三べん下りただけだ。ここらはずいぶんいい処だけれどもやっぱり僕はもうあきたねえ。」又三郎は草に足を投げ出しながら斯う云いました。「又三郎さん北極だの南極だのおべだな。」 一郎は又三郎に話・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・別当がこんどは、革鞭を二三べん、ひゅうぱちっ、ひゅう、ぱちっと鳴らしました。 空が青くすみわたり、どんぐりはぴかぴかしてじつにきれいでした。「裁判ももう今日で三日目だぞ、いい加減になかなおりをしたらどうだ。」山ねこが、すこし心配そう・・・ 宮沢賢治 「どんぐりと山猫」
・・・ 一九二五年 一九二七年 労働者 一五・五 一二・五 農民 三一・〇 二八・三 勤人 三四・八 三五・七 其他 一八・七 二三・五 この数字はもう古いが、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・日本風の宿屋は二三、名を調べてあった。然し私共は京都を出たばかりから、美味い紅茶やバターの味の欠乏を感じていた。長崎ではホテルに泊るというのが、楽しみの一つでもあった。 停車場前の広場から大通りに出ると、電車の軌道が幌から見える。香港、・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
わたしの青春について語るとき、そこには所謂階級的なヒロイズムもないし、勤労者的な自誇もない。そこにあるのは一九一四、五年から二三、四年にかけての日本の中流的な家庭のなかで、一人の少女が次第に人間としてめざめてゆく物語がある・・・ 宮本百合子 「私の青春時代」
出典:青空文庫