・・・文学作品の創られてゆく過程を引用の文章のように二元的に見ることが不完全であるということは、過去数年来の刻苦によって、既に明らかにされていはしないだろうか。 現実の起伏の詳細と変化とを世界歴史の進歩の方向において感じ、理解し、全的に描き出・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
・・・ひところ、良心的な人間の社会的任務というものが、その人々の専門の技術以外の社会的行動、政治的な行動に重点を置いて二元的に考えられていた時期があった。そういう行動の可能が周囲に見えなくなったので、人間としての良心的に生きる途を失ったような当惑・・・ 宮本百合子 「若き時代の道」
・・・人間の恋愛をとりあげるのに、精神と肉体とをそういう素朴さで二元的なものに観、肉体の欲求を獣的と見たことも今日の私たちの心持から推せば何か奇怪であり、滑稽でもある。愛を表現しようとする心の望みが高まったとき、私たちはどうしてその熱情に応じて花・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫