・・・「七月廿七日、晴。涼し。前略。交際馴れた近藤氏はロシア語も自由であるらしく、種々とメヌーをくり返して注文された。羊肉の串焼を高く捧げて、一人の助手がそれを恭々しくぬいては客に供する、実にこと/″\しい。そのうちに、この家独特のロシアの貴族?・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・ きょうの毎日に 去年、五〇パーセントであった廿五年八〇パーセントとある。これは、権力そのものが人権蹂躙を許している幅のひろがりである。追放を考えても すべて 人権蹂躙、読売は 地方刑罰条令が・・・ 宮本百合子 「東大での話の原稿」
・・・ 廿四日、天気好し。隣の客つとめて声高に物語するに打驚きて覚めぬ。何事かと聞けば、衛生と虎列拉との事なり。衛生とは人の命延ぶる学なり、人の命長ければ、人口殖えて食足らず、社会のためには利あるべくもあらず。かつ衛生の業盛になれば、病人あら・・・ 森鴎外 「みちの記」
・・・却説去廿七日の出来事は実に驚愕恐懼の至に不堪、就ては甚だ狂気浸みたる話に候へ共、年明候へば上京致し心許りの警衛仕度思ひ立ち候が、汝、困る様之事も無之候か、何れ上京致し候はば街頭にて宣伝等も可致候間、早速返報有之度候。新年言志・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫