・・・ 知っての通り、まずおれはお手のものの活版で、二色刷りの凝ったチラシをつくってやった。次に包装だ。箱など当時としては随分思いきったハイカラな意匠で体裁だけでいえば、どこの薬にもひけをとらぬ斬新なものだった。なお、大阪市内だけだが、新聞に・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・ 何だか彼んだか訳の分らない事を二色の金切声が叫びながら、ドッタンバッタンと云うすさまじさなので、水口で何かして居た女中達は皆足音をしのばせて垣根の隙――生垣だから不要心な位隙だらけになって居る――からのぞくと、これはこれはまあ何と云う・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
・・・れるにふさわしいのだが、今日の東京の建築物では室内のスケールも変って来ていてその質量感にふさわしいようにという関心が、様々な色のこみすぎた盛り合わせとして現れて、却って色彩的でなくなってしまっている。二色或は三色きりの調和にある実にすがすが・・・ 宮本百合子 「働くために」
・・・その時ツァウォツキイは二色のずぼんを穿いていた。一本の脚は黄いろで、一本の脚は赤かった。髪の毛の間にははでな色に染めた鳥の羽を挿していた。その羽に紐が附けてあって、紐の端がポッケットに入れてある。その紐を引くと、頭の上で蝋燭を立てたように羽・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
出典:青空文庫