・・・おめでとう存じまする、皆、太夫様の御人徳。続きましては、手前預りまする池なり、所持の屋形船。烏滸がましゅうござりますが、従って手前どもも、太夫様の福分、徳分、未曾有の御人気の、はや幾分かおこぼれを頂戴いたしたも同じ儀で、かような心嬉しい事は・・・ 泉鏡花 「伯爵の釵」
・・・初代もなかなか苦労人でかつ人徳があったが、淡島屋の身代の礎を作ったのは全く二代目喜兵衛の力であった。四 狂歌師岡鹿楼笑名 前記の報条は多分喜兵衛自作の案文であろう。余り名文ではないが、喜兵衛は商人としては文雅の嗜みがあったの・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・頼光をはじめ、鎮西八郎、悪源太義平などの武勇に就いては知らぬ人も無いだろうが、あの、八幡太郎義家でも、その風流、人徳、兵法に於いて優れていたばかりでなく、やはり男一匹として腕に覚えがあったから、弓馬の神としてあがめられているのである。弓は天・・・ 太宰治 「花吹雪」
出典:青空文庫