・・・ 民主的な社会生活の根本には、人権の尊重という基底が横わっている。人権尊重ということは、正当な思想を抑圧して小林多喜二のような卓抜な一個の社会人・作家を撲殺するようなことが決して在ってはならないという通念を意味する。同時に、それを主体的・・・ 宮本百合子 「今日の生命」
・・・これまで日本の民衆はさまざまの奇妙独善的な人権蹂躙的な誓いをたてさせられてきた。こんにち民衆が自分の未来のためにもっている誓いはただ一つしかない。それは欺瞞のない日本の民主化と自主自立の民族生活をもつことである。新しい五人の放送委員はあらた・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・いろいろとんちんかんなことはあったにしろ、大局において日本の人民の基本的人権の確立についての土台石はこの期間におかれた。言論・出版・集会の自由、良心と身体の自由。治安維持法が廃止され、憲兵・特高制度が廃止されたということは、直接治安維持法の・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・ 憲法が基本的人権といっている、その人権も勤労と生存のすべての条件が人間らしく守られているときにこそはじめて実際の人間として確立されるものです。民法が改正されて、結婚の自由も、財産に対する権利も、母親の親権も増大しました。しかし文字の上・・・ 宮本百合子 「自覚について」
・・・ソヴェトの防衛ということは、わたしたちが外からデマを通じて理解するよりも、はるかに基本的、人権的問題ですから。 たとえば、社会主義社会の子供の教育は、階級の意識で画一されているという点が指摘されるけれども、私にいわせれば、子供を教えない・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・ 一九五〇年になって、基本的人権ということばが日用語にはいっているとき、日本では東京全都民の指紋をとることにした、という現象は、世界にむかって、日本そのものが何人かにとって一つの容疑者の檻になりつつあるということを語るのだろうか。あるい・・・ 宮本百合子 「指紋」
・・・ 十二月四日から一週間、「人権擁護週間」が行われた。読売新聞が社説「人権擁護の完全を期するために」で第一、警察官の民主化の実行、第二、地方刑罰条例の濫発への警告――売春等取締条例・公安条例など「国会で決定せず、地方自治体できめしかも・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・ここまで、日本の労働運動の実状について極東委員会の注意を喚起し、基本的人権を現実のものとするようにと日本的限界を拡げていったのは、どういう日本の官僚たちの仕事だったろう。これこそまったく、勤労大衆の実行力と組合の献身とその前衛である党とが、・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・民主主義の根本的な人権の確立はこのことにかかっている。同時に私達は自分の人民としての権利――人権の必然に立って、自分達の生活をよりよくして行く努力、社会をより合理的にこしらえ直して行く権利というものを持っている。外部の力から無理強いされた生・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・ 戦争中という言葉が、今日いわれる場合、私たちは一言の説明を加えないでも、それが苦しかった時代、無茶な抑圧のあった時代、人権がふみにじられていた時期として、心が通じ合う。一冊の雑誌、一冊の本、風呂屋、理髪店での世間話さえ、それが戦争につ・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
出典:青空文庫