・・・ 読者に奇異の感を与えるそのような冒頭の文句ではじまる、長文の上申書の終りは、かつての転向上申書の書式を思わせ、共産党への罵倒と「いかなる罰も天命であって人智のなすべからざるところと。そして後、新たなる魂をもって邦家のために生き抜こうと・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・文明というと、たとえば十六世紀の日本の文明に二十世紀日本の文明を対比しているように、非常に大づかみにある時代なり社会なりの到達した人智開発の水準を概括して呼べると思う。その場合には、客観的にその社会がある水準に達している文明の恩恵に直接浴し・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・哲学者としては彼は生命の創造力の無限に驚いて人智のかなたに広い世界を認めることになる。――偶像は再び求められるのである。 神は再びよみがえらなくてはならぬ。それがキリスト再臨によって証せられるか否かは我らの知るところでない。我らは神を知・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・すなわち解放せられた自然的欲望はその自由の悪用のゆえに貪婪の極をつくしてついに自分を地獄に投じた。人智の誇りであるべき自然力征服は、それ自身においては「文化」を意味し得るようなものでないということを遺憾なく立証した。ここで自然科学崇拝の傾向・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫