・・・随分髑髏を扱って人頭の標本を製した覚もあるおれではあるが、ついぞ此様なのに出逢ったことがない。この骸骨が軍服を着けて、紐釦ばかりを光らせている所を見たら、覚えず胴震が出て心中で嘆息を漏した、「嗚呼戦争とは――これだ、これが即ち其姿だ」と。・・・ 著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷 「四日間」
・・・自分の座というのは自分が足を伸ばして寝るだけの広さで、同業の新聞記者が十一人頭を並べて居る。自分らの頭の上は仮の桟敷で、そこには大尉以下の人が二、三十人、いつも大声で戦の話か何かして居る。その桟敷というのは固より低いもので、下に居る自分らが・・・ 正岡子規 「病」
・・・をする彼に対して、朝鮮農民が「たれ一人頭をあげるものも無かった」のは当然ではあるまいか。彼らは、筆者よりよく知っているのだ。たれが、朝鮮から彼らを満州の荒地へ追いこくったかを! そして、今またその満州へまでやって来ているのは何者であるかを、・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫