・・・こう云う人間に近い神は、五塵を離れていぬのじゃから、何を仕出かすか油断はならぬ。このためしでもわかる通り、一体神と云うものは、人間離れをせぬ限り、崇めろと云えた義理ではない。――が、そんな事は話の枝葉じゃ。康頼と少将とは一心に、岩殿詣でを続・・・ 芥川竜之介 「俊寛」
・・・ と安子の言葉を揉み消すような云い方をしたが、ふと考えてみれば、安子のような女はもうまともな結婚は出来そうにないし、といって堅気のままで置けば、いずれ不仕末を仕出かすに違いあるまい。それならばいっそ新太郎の云うように水商売に入れた方がか・・・ 織田作之助 「妖婦」
・・・人非人でないから、あんな事も仕出かすのです」 私は格別うれしくもなく、「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ」 と言いました。 太宰治 「ヴィヨンの妻」
出典:青空文庫