・・・灰色の外套長く膝をおおい露を避くる長靴は膝に及び頭にはめりけん帽の縁広きを戴きぬ、顔の色今日はわけて蒼白く目は異しく光りて昨夜の眠り足らぬがごとし。 門を出ずる時、牛乳屋の童にあいぬ。かれは童の手より罎を受け取りて立ちながら飲み、半ば残・・・ 国木田独歩 「わかれ」
・・・という論文を読んだとき、過去のプロレタリア文学運動に対する同氏の評価に私自身の理解と相異したものがあるのを感じたことがあったが、今日「囚われた大地」を通読して、同じ論文で森山氏がその作品を評していた言葉を再び思い起した。「農村のそれぞれの階・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・の表現とこの永瀬さんのこの詩の言葉とは何と相異しながら、女性としての感覚においては同じ本質をもっていることだろう。 永瀬さんは、女の歴史、日本の女の成長の酸苦を「麦死なず」のなかにうたっている。私らにとっては樹木が自然の季節・・・ 宮本百合子 「『静かなる愛』と『諸国の天女』」
・・・を書いておられたが、私は坪内先生の一生をあるべきとこにあって完璧たらしめた先生の聰明、努力、達見、現実性を学ぶとすれば、それは私の時代のものにとっては必然的に白鳥氏の言葉にふくまれているものとは全く相異した形をとって、現実にはあらわれて来る・・・ 宮本百合子 「坪内先生について」
出典:青空文庫