・・・だの美辞は横溢しているくせに、級の幹事が、ここで女教師代用で、髪形のことや何かこせこせした型をおしつけた。その頃の目白は、大学という名ばかりで、学生らしい健全な集団性もなく、さりとて大学らしい個性尊重もされていなかった。 学生というはっ・・・ 宮本百合子 「女の学校」
・・・ 毎朝日本の総ての婦人はどんな燃料で、どれだけの時間をかけて、どんな代用食を作っているでしょうか。私達の使っている燃料とその燃料が使えるようなかまど、いもや粉の代用食、これ等総ては近代的でしょうか。私達のおばあさん、ひいおばあさん達がま・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・食糧も代用食に訓練しておけ。子供の弁当に大豆類を多くせよ、などの警報にひかれている。今日の日本の財政のまかない手である蔵相はラジオで放送して、銃後の民の心がけというものをとかれた。輸入品の節約をするように。国産品も節約をするように。だが酒、・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・ きょう新聞をみると、政府は主食代用を主な目的としてフィリッピンその他から砂糖を五十五万トン輸入することになったと出ている。 いまの東京の、疲労のはげしい毎日の生活で、疲れのやすまる甘いものがこうして段々ヤミでなくて一般の家庭にもゆ・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・ ○闇の力の、代用の場面のついて居るところは、矢張り、代りにとしてついて居る方が、舞台にかけたらよかろうと思う。ニキタが、赤子を押しころすところを、第一のようにされては、殆ど見て居るに堪えない。ニキタの苦しみ、どうにもならなかった彼の苦・・・ 宮本百合子 「「禰宜様宮田」創作メモ」
・・・ ひと月たたない或る朝、店の倉庫代用につかわれていた納屋から火が出た。そこには、石油、タール、バタ等の商品が入れてあった。ゴーリキイが、火をくぐって納屋へとび込みタールの樽をころがし出し、石油の桶へ手をかけたら――樽の栓はあいていた。そ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・「お昼は栄養を考慮したお菜ですが近頃では国策に応じて代用食や節米料理が多いようです」とだけかかれている部分に、実際どんなものが食べられているかということが書かれたらよかったと思います。 生活に対するちゃんとした態度や女らしさというものの・・・ 宮本百合子 「ルポルタージュの読後感」
・・・ 三 代用食 このあいだ都下のある新聞の投書欄で、代用食について一くみの応酬が行われた。 はじめ投書した某氏は男で某紙の家庭欄に紹介されている代用食の製法にしたがってためしてみたらたいへんどっさり砂糖がいっ・・・ 宮本百合子 「私の感想」
・・・ 朝日の吸殻を、灰皿に代用している石決明貝に棄てると同時に、木村は何やら思い附いたという風で、独笑をして、側の机に十冊ばかり積み上げてある manuscrits らしいものを一抱きに抱いて、それを用箪笥の上に運んだ。 それは日出新聞・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・その彼らはまた処女の神聖を神にささげると称して神殿を婚姻の床に代用する。性欲の神秘を神に帰するがゆえに、また神殿は娼婦の家ともなる。パウロはそれを自分の眼で見た。そうして「いたく心を痛め」た。桂の愛らしい緑や微風にそよぐプラタアネの若葉に取・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
出典:青空文庫