・・・女教員でさえ四十一歳になった女教師は、新しく本任用しない東京都の内規がある。 離婚を要求する女性の理由のなかには、夫の乱れた生活は、妻としての自分に耐えがたいと同時に子供の教育にもわるいから、ということも珍しくない。離婚するなら子供はす・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・嫡子光尚の周囲にいる少壮者どもから見れば、自分の任用している老成人らは、もういなくてよいのである。邪魔にもなるのである。自分は彼らを生きながらえさせて、自分にしたと同じ奉公を光尚にさせたいと思うが、その奉公を光尚にするものは、もう幾人も出来・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・某局長の目金で任用せられたとか云うので、木村より跡から出て、暫くの間に一給俸まで漕ぎ附けたのである。 なんでも犬塚に知られた事は、直ぐに上の方まで聞える。誰でも上官に呼ばれて小言を聞いて見ると、その小言が犬塚の不断言っている事に好く似て・・・ 森鴎外 「食堂」
・・・しかし仲平の父は、三十八のとき江戸へ修行に出て、中一年おいて、四十のとき帰国してから、だんだん飫肥藩で任用せられるようになったので、今では田畑の大部分を小作人に作らせることにしている。 仲平は二男である。兄文治が九つ、自分が六つのとき、・・・ 森鴎外 「安井夫人」
・・・人事については家柄に頼らず、一々の人の器用忠節を見きわめて任用すべきことを力説している。戦争については、吉日を選び、方角を考えて時日を移すというような、迷信からの脱却を重大な心掛けとして説いている。その他正直者の重用を説き、理非を絶対に曲げ・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫