・・・また先生の作品を分析的に研究しようと企てる人があらばその人はやはり充分綿密に先生の俳句を研究してかかる事が必要であろうと思う。 寺田寅彦 「夏目先生の俳句と漢詩」
・・・ そうかと言って、自分でこのような大問題をどうにかしようという非望を企てるわけにも行かないわけであるが、それでもただやみがたい好奇心から、余暇あるごとに少しずつ、だんだんに手近い隣接国民の語彙を瞥見する事になり、それが次第次第に西漸して・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・これだけの眼識のないものが人間を写そうと企てるのは、あたかも色盲が絵をかこうと発心するようなものでとうてい成功はしないのであります。画を専門になさる、あなた方の方から云うと、同じ白色を出すのに白紙の白さと、食卓布の白さを区別するくらいな視覚・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・要するにどの女でも若い盛りが過ぎて一度平静になった後に、もうほどなく老が襲って来そうだと思って、今のうちにもう一度若い感じを味ってみたいと企てる、ちょいとした浮気の発動が、この女の上にもめぐって来ているのだと認めたのである。あの手紙にはこの・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
・・・この主張は、実に、人類の食物の半分を奪おうと企てるものである。換言すれば、この主張者たちは、世界人類の半分、則ち十億人を饑餓によって殺そうと計画するものではないか。今日いずれの国の法律を以てしても、殺人罪は一番重く罰せられる。間接ではあるけ・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・そして、つい半年許り前は、地球の何処の隅に其那字が在るかと云うように無智であった者まで、流行の標言を振りかざして、目的のない突進を企てるような事に成って仕舞います。其故、欧州の戦乱後、世界の呪文のようになった米国の女性に就て物を考える場合に・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
出典:青空文庫