近代企業としての映画は、経営の上にも技術の上にも急速な発達をとげているのだが、映画に扱われている女の生活というものは一様にある水準に止まっている。技術的にはアメリカやフランスの映画が先へ歩いて行っている部分のあることは明か・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・徴収した金は大衆がその中の一割とすこししか持っていない戦時公債を償還して、大企業銀行などをうるおす予定になっている。二万円の区切りは今日の円で二千円だといえばきわめて広汎な家庭が包括されて来るのである。 実にわかりやすく懐に突込まれる手・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・産業別の生産組合は、或る一つの企業をやるとき、必ず天から勤労者福祉資金何割というものを予算に加えて仕事をはじめる。 五箇年計画でソヴェト同盟の中には、水力発電所、工場、集団農場、夥しくふえた。ソヴェトで工場が建ち集団農場が一つふえたとい・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・日本の社会生産と経済とは、封建のままの土地制度、耕農手段を基礎としていて、一握りの進歩的大名と、革新的下級武士と、外部からのヨーロッパ、アメリカとの力が結合して倒幕運動がおこされ、日本の近代企業、銀行、会社の創立は、すべて、政府の上からの保・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・何しろ、出版企業というものに結びついているのだから。 文学を愛し、文学をつくる人になる前に生活の必要と文学愛好の心からジャーナリズム関係に入る若い人は、みんな大抵幻滅を経験する。バルザックの「幻滅」とはちがった意味で。遠くから見て敬意を・・・ 宮本百合子 「豪華版」
・・・ところが、五ヵ年計画が四年で完成される程のテンポで進捗するにつれ、企業内の生産手段は電化その他で高まり、平均労働時間がグッと減った。現在、ソヴェト同盟に千三百六十八万四千人の勤労者が活動している。そのうち、半数はもう七時間労働でやっている。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 抑々、ソヴェト同盟の演劇や映画は、これまでだって唯の一度も、資本主義国の商業主義が企業として利潤のために、金のあるもののための享楽道具としてつかわれたことはなかった。 経営は国家管理の下にされている。芝居の上演目録は詮衡機関にかけ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ましてや現在、それぞれの大都会で、或は山間の企業のある場所で生活とたたかっている人々の多くは、すでに故郷を捨てて祖先の墓のある土地から根をきられて、そこへ動いている。 故郷のない人々の文学が、故郷というものについての新しい文学的要素をか・・・ 宮本百合子 「故郷の話」
・・・ しかも、日本の軍事的権力によって特別な保護をうけていた企業家たちは、生産の大半を婦人の労力によって行いながら、勤労婦人の福祉施設、母性保護設備、災害予防施設は行わずにきたのです。 今日、日本の組織労働者は四百万人あります。その半数・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・男の働きての失業のため、婦人は最悪の労働条件と闘いながら企業へ参加している。そこで婦人たちも、めきめき自身の階級としての力、団結の威力を学びとっている。手拭を姉さんかぶりにした若い農婦が、マンノーをとって争議に参加するばかりでない。女工さん・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
出典:青空文庫