・・・民的訓練の欠如、健全な娯楽の指導の必要としてこの事件を観察し、そこに学生の多かったことは特別反省すべきことだと、「昨夜もあすこへ行って学生を呼んで叱りとばしたが今の時代、学生は娯楽などというよりたまの休日は家に帰って本でも読むことだ」と談話・・・ 宮本百合子 「「健やかさ」とは」
・・・あちらでは、日曜日は一般に全くの休日で、八百屋から肉屋、文房具屋まで店を閉じてしまいます。それ故、日曜日、次の月曜に入用なものは勿論、買いものは出来る丈この日に纏め、下町の、それぞれで名を売っているよい店で買おうとするのです。 経済思想・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・そのために、四月十日は休日になった。それほど大切な投票であるのに、全国で十四万人余の選挙人名簿記載洩れが生じた。新聞は、婦人参政権のために、殆ど一生を費して来た市川房枝女史が、当日わざわざ遠方の投票所へ行ってはじめて記載洩れで投票出来ないこ・・・ 宮本百合子 「春遠し」
・・・労役免除の日は食餌を減らして、囚人たちが休日をたのしみすぎないようにする。それが、監獄法による善導の方法と考えられているのである。 焼けたいもをとって、ひろ子もたべた。「あら、本当に、このおいもは、特別おいしいわ」「そうだろう?・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ 休日毎に朝早くゴーリキイは袋をもって家々の中庭や通りを歩き、牛骨、襤褸、古釘などを拾いあつめた。襤褸と紙屑とは一プード二十哥。骨は一プード十哥か八哥で屑屋が買った。彼はふだんの日はこの仕事を学校がひけてからやった。 屑拾いよりもっ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ 休日ごとにゴーリキイは袋をもって家々の中庭の通りを歩き、牛の骨、ぼろ、古釘などをひろった。またオカ河の材木置場から薄板を盗むこともやった。それで三十カペイキから半ルーブリを稼ぎ、銭は祖母にやる。――この時代の仲のよい稼ぎ仲間とのほこり・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・ 自分達が、久しぶりの休日か何かで、悠くり二人限りの時を楽しもうとして居る時、不意に小林さんが来て、奥様が一寸直ぐ来て呉れ、と仰云います、等と強制される時、又、仕事のある時、小さい妹や女中が、のんきにふざけに来る場合。後者のときは、まあ・・・ 宮本百合子 「又、家」
・・・隅っこに引込んで樹の枝の下から肺活量の足りない声が休日の労働者のまばらなかたまりの上に散った。人気があるのは、 ┌─────┐ │自由思想家│ └─────┘ 台をかこんでびっしり帽子のあるのや無いのがきい・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・ 花房が大学にいる頃も、官立病院に勤めるようになってからも、休日に帰って来ると、先ずこの三畳で煎茶を飲ませられる。当時八犬伝に読み耽っていた花房は、これをお父うさんの「三茶の礼」と名づけていた。 翁が特に愛していた、蝦蟇出という朱泥・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
・・・ それでは今日は栖方の休日にしようと云うことになって、それから梶たち三人は句を作った。青葉の色のにじむ方に顔を向けた栖方は、「わが影を逐いゆく鳥や山ななめ」という幾何学的な無季の句をすぐ作った。そして葉山の山の斜面に鳥の迫っていった四月・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫