・・・ 一日ミロにおける住宅で友人達と会合しあっていたとき誰かがその家に放火した。それは仲間に入れてもらえなかった人の怨恨によるともいわれ、またクロトンの市民等がピタゴラス一派の権勢があまり強すぎて暴君化することを恐れたためともいわれている。・・・ 寺田寅彦 「ピタゴラスと豆」
・・・偶然の会合に興を得て店頭の言談には忽花がさいた。主人は喜んで新に買入れた古書錦絵の類を取出して示す。展覧に時刻を移したが、初夏の日は猶高く食時にもまだ大分間がある。さりとてこの人数袂をつらねて散歩に行くべき処もない。上野公園の森は目の前に見・・・ 永井荷風 「百花園」
・・・其夜彼等が会合したのは全く悪戯のためであった。悪戯は更に彼等の仲間にも行われざるを得なかった。「そりゃ畑へ落して来たぞ」 他の一人がいった。「どこらだんべ」 落したと思った一人は熱心に聞いた。「西から三番目の畝だ、おめえ・・・ 長塚節 「太十と其犬」
・・・その上明日の会合まで約束して宅へ帰った。帰ったのは夜の九時頃である。文鳥の事はすっかり忘れていた。疲れたから、すぐ床へ這入って寝てしまった。 翌日眼が覚めるや否や、すぐ例の件を思いだした。いくら当人が承知だって、そんな所へ嫁にやるのは行・・・ 夏目漱石 「文鳥」
・・・「常に孤独で居る人間は、稀れに逢う友人との会合を、さながら宴会のように嬉しがる」とニイチェが云ってるのは真理である。つまりよく考えて見れば、僕も決して交際嫌いというわけではない。ただ多くの一般の人々は、僕の変人である性格を理解してくれないの・・・ 萩原朔太郎 「僕の孤独癖について」
・・・どうぞこの会合をお避けなさらないで、わたくしに失望をおさせなさらないように、くれぐれもお願申します。わたくしはあなたにお目に掛かって、それをたよりにこれからさきの生活を続けようと存じています。それからどうぞ今はいけないから後にしろなんぞとお・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
・・・配給と買出しにしばられて、会合に出席する時間さえもてないでいる主婦たちの毎日が、どんなに凌ぐに張合あるものとなって来るだろう。大小の軍需成金たちは、戦時利得税や、財産税をのがれるために濫費、買い漁りをしているから、インフレーションは決して緩・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・の大学の社会科の女子学生と男子学生とが、夏期休暇中の共同研究として、浮浪者の生活調査をやるとか、女子の失業と売淫生活に堕ちてゆく過程の調査だとか、そういう現実の共同作業をするところまではいっていない。会合で討論して、代表を選出し、共同研究会・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・そのころ内務省の中で、ジャーナリストたちを集めて、役所の注文をなす会合がもたれていた。そこで、何人かの文筆家が名ざされて、雑誌その他に執筆させないようにといわれたのであった。 三七年の十二月三十一日の午後、私は、重い風呂敷包みを右手にか・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・たちを訪ねていられるし、また井上、元良両先生の方でも、田中喜一、得能、紀平などの諸氏とともに、学士会で西田先生のために会合を催していられる。田中、得能、紀平などの諸氏は、当時東京大学の哲学の講師の候補者であったらしい。西田先生はその八月の末・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫