・・・列席せる会員は下のごとし。 我ら十七名の会員は心霊協会会長ペック氏とともに九月十七日午前十時三十分、我らのもっとも信頼するメディアム、ホップ夫人を同伴し、該ステュディオの一室に参集せり。ホップ夫人は該ステュディオにはいるや、すでに心霊的・・・ 芥川竜之介 「河童」
・・・元来この画はね、会員の画じゃないのです。が、何しろ当人が口癖のようにここへ出す出すと云っていたものですから、遺族が審査員へ頼んで、やっとこの隅へ懸ける事になったのです。」「遺族? じゃこの画を描いた人は死んでいるのですか。」「死んで・・・ 芥川竜之介 「沼地」
・・・ つれは、毛利一樹、という画工さんで、多分、挿画家協会会員の中に、芳名が列っていようと思う。私は、当日、小作の挿画のために、場所の実写を誂えるのに同行して、麻布我善坊から、狸穴辺――化けるのかと、すぐまたおなかまから苦情が出そうである。・・・ 泉鏡花 「木の子説法」
・・・そして、二人目の講師の演説が終った時には、もともと極端に走りやすい私はもう禁酒会員名簿に署名をしていました。そのころ東成禁酒会の宣伝隊長は谷口という顔の四角い人でしたが、私は谷口さんに頼まれて時々演説会場で禁酒宣伝の紙芝居を実演したり、東成・・・ 織田作之助 「アド・バルーン」
・・・なお、この男を分会長にいただいている気の毒な分会員達は二週間の訓練の間、毎日の如く愚劣な、そしてその埋め合せといわんばかりに長ったらしい殺人的演説を聴かされて、一斉に食欲がなくなったそうである。この話を聴いた時、私は鼻血は出たけれど大工の演・・・ 織田作之助 「髪」
・・・最初私が美人座へ行ったのは、その頃私の寄宿していた親戚の家がネオンサインの工事屋で、たまたま美人座の工事を引受けた時、クリスマスの会員券を売付けられ、それを貰ったからであるが、戎橋の停留所で市電を降り、戎橋筋を北へ丸万の前まで来ると、はや気・・・ 織田作之助 「世相」
・・・それが、赤玉から頼まれてクリスマスの会員券を印刷したのが、そこへ足を踏入れる動機となってしまったのである。 銀色の紐を通した一組七枚重ねの、葉形カードに仕上げて、キャバレエの事務所へ届けに行くと、一組分買え、いやなら勘定から差引くからと・・・ 織田作之助 「雪の夜」
・・・月々例会を持った。会員は恐らく二三十人もいたであろう。しかし、そこから農民を扱って文学的に実を結んだのは佐左木俊郎一人きりであった。佐左木俊郎はいわゆる農民作家らしい農民作家である。農民の生活を知っている。極めて農民的な自然な姿において表現・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・それから御得意に挨拶に行き、会員、主任のうちに呼ばれて御馳走になり、カルタをとり、いま帰って、これを書いているのが夜十時です。気がつかれて、手紙を書くのがイヤです。簡単にあとかきます。会社を二月休んだ原因は、或る事から、酔の上、職人九人を相・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・二科会から迎えられて、会員になりました。そうして、あなたは、アパートの小さい部屋を、恥ずかしがるようになりました。但馬さんもしきりに引越すようにすすめて、こんなアパートに居るのでは、世の中の信用も如何と思われるし、だいいち画の値段が、いつま・・・ 太宰治 「きりぎりす」
出典:青空文庫