・・・ 蓋し司法権の独立完全ならざる東洋諸国を除くの外は此如き暴横なる裁判、暴横なる宣告は、陸軍部内に非ざるよりは、軍法会議に非ざるよりは、決して見ること得ざる所也。 然り是実に普通法衙の苟も為さざる所也。普通民法刑法の苟も許さざる所也。・・・ 幸徳秋水 「ドレフュー大疑獄とエミール・ゾーラ」
・・・長兄は、二十五歳で町長さんになり、少し政治の実際を練習して、それから三十一歳で、県会議員になりました。全国で一ばん若年の県会議員だったそうで、新聞には、A県の近衛公とされて、漫画なども出てたいへん人気がありました。 長兄は、それでも、い・・・ 太宰治 「兄たち」
・・・二十九歳で県会議員。男ぶりといい、頭脳といい、それに大へんの勉強家。愚弟太宰治氏、なかなか、つらかろと御推察申しあげます。ほんとに。三日深夜。粉雪さらさら。北奥新報社整理部、辻田吉太郎。アザミの花をお好きな太宰君。」「太宰先生。一大事。・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・まあ新講談と思えば、講談の奇想天外にはまた捨てがたいところもあるのだから、楽しく読めることもあるけれど、あの、深刻そうな、人間味を持たせるとかいって、楠木正成が、むやみ矢鱈に、淋しい、と言ったり、御前会議が、まるでもう同人雑誌の合評会の如く・・・ 太宰治 「鉄面皮」
・・・ 親兄弟みんなたばになって、七ツのおれをいじめている、とひがんで了って、その頃から、家族の客間の会議をきらって、もっぱら台所の石の炉縁に親しみ、冬は、馬鈴薯を炉の灰に埋めて焼いて、四、五の作男と一緒にたべた。一日わが孤立の姿、黙視し兼ねてか・・・ 太宰治 「二十世紀旗手」
・・・そこで邸では幾度となく秘密の親族会議が開かれた。弁護士や、ポルジイと金銭上の取引をしたもの共が、参考に呼び出される。プラハとウィインとの間を、幾人かの尼君達が旅行せられる。実際鉄道庁で、この線路の列車の往復を一時増加しようかと評議をした位で・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・ 自分は近来は煙草で癇癪をまぎらす必要を感じるような事は稀であるが、しかしこの頃煙草の有難味を今更につくづく感じるのは、自分があまり興味のない何々会議といったような物々しい席上で憂鬱になってしまった時である。他の人達が天下国家の一大事で・・・ 寺田寅彦 「喫煙四十年」
・・・戦争のほうは会議でいくらか延期されるかもしれないが、地震とは相談ができない。 大正十二年の大震災は帝都と関東地方に限られていた。今度のは箱根から伊豆へかけての一帯の地に限られている。いつでもこの程度ですむかというとそうは限らないようであ・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・この数は二、三、四、五、六のどれでも割り切れるから、一年おきの行事でも、三年に一度の万国会議でも、四年に一度のオリンピアードでも、五年六年に一度の祭礼でも六十年たてばみんな最初の歩調をとり返すのである。その六十年はまたほぼ人間の一週期になる・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・四月十六日 喫煙室で乗客の会議が開かれた。一般の娯楽のために競技や音楽会をやる相談である。四月十七日 きのう紛失したせんたく袋がもどって来た。室のボーイの話ではせんたく屋のシナ人が持っていたのだそうな。四月十八日 顔・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
出典:青空文庫