・・・ 白は頭を低めるが早いか、声のする方へ駈け出しました。 けれどもそこへ来て見ると、白の目の前へ現れたのは犬殺しなどではありません。ただ学校の帰りらしい、洋服を着た子供が二三人、頸のまわりへ縄をつけた茶色の子犬を引きずりながら、何かわ・・・ 芥川竜之介 「白」
・・・ 人間を動物的に低める性的誇張は、ファシズムの一つの方法です。ナチスが青年男女を「わが陣営」にひきつけるためにとった方法は、いわゆる性の解放でした。正しい民主的な社会を求める人々は、こういう性のこみちから人間を人間でなくするような人間破・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・赤坊のために、自身の発育を低める党員があるだろうか? 娘にとって闘士であり、革命家である父であるためには、結局日常生活の実践そのもので、彼がひるまぬ闘士であり、革命家でなければならない筈ではないか? ドミトリーは、困った揚句、一策を思い・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・青年を否定する事が直ちに反映して、彼等自らの青年時代の侮蔑であるのを知らない或人は、周囲の青年の価値を低める事に依って自らを高めようとする卑劣さがございます。所謂女らしさと云う曖昧な軛と、極端な家族制度の弊と、男性の無智と不備な社会制度は、・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・過去の歴史の絵巻が示しているとおり文明があるところまで来てその文明の故にかえって文化を低めるようになる場合、文化の創造力というものは、常にもっとも多難な道を辿るものである。そして、その過程で婦人が負うてゆく文化性というものは、その国の社会の・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・しかしながら、一般読者の胸の中には、折りかえして、では何故、現代の文学愛好者の大多数がそういう自他ともに低めるような情けない末技的興味にひき込まれてしまっているのであるかという反問が生じる。 明治以来今日までの七十年間、日本のブルジ・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
出典:青空文庫