・・・ 太宰イツマデモ病人ノ感覚ダケニ興ジテ、高邁ノ精神ワスレテハイナイカ、コンナ水族館ノめだかミタイナ、片仮名、読ミニククテカナワヌ、ナドト佐藤ジイサン、言葉ハ怒リ、内心ウレシク、ドレドレ、ト眼鏡カケナオシテ、エエ・・・ 太宰治 「創生記」
・・・ 改造十一月号所載、佐藤春夫作「芥川賞」を読み、だらしない作品と存じました。それ故に、また、類なく立派であると思った。真の愛情は、めくらの姿である。狂乱であり、憤怒である。更に、 寝間の窓から、羅馬の燃上を凝視して、ネロは、黙し・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・相変らずの佐藤一斎先生の書である。黄村先生には、この掛軸一本しか無いようである。私は掛軸の文句を低く音読した。 寒暑栄枯天地之呼吸也。苦楽寵辱人生之呼吸也。達者ニ在ッテハ何ゾ必ズシモ其遽カニ至ルヲ驚カン哉。 これは先日、先生から読み・・・ 太宰治 「不審庵」
・・・「佐藤春夫曰く、悪趣味の極端。したがってここでは、誇張されたるものの美が、もくろまれて居る。」――「文士相軽。文士相重。ゆきつ、戻りつ。――ねむり薬の精緻なる秤器。無表情の看護婦があらあらしく秤器をうごかす。」 始発の電車。 夜が明・・・ 太宰治 「めくら草紙」
・・・住み難き世を人一倍に痛感しまことに受難の子とも呼ぶにふさわしい、佐藤春夫、井伏鱒二、中谷孝雄、いまさら出家遁世もかなわず、なお都の塵中にもがき喘いでいる姿を思うと、――いやこれは対岸の火事どころの話でない。おのれの作品のよしあしをひ・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・それが後日第一回芥川賞の時に候補に上げられました。 その「逆行」と殆ど前後して同人雑誌「日本浪曼派」に「道化の華」が発表されました。それが佐藤春夫先生の推奨にあずかり、その後、文学雑誌に次々と作品を発表することができました。 それで・・・ 太宰治 「わが半生を語る」
此作は、名古屋刑務所長、佐藤乙二氏の、好意によって産れ得たことを附記す。――一九二三、七、六―― 一 若し私が、次に書きつけて行くようなことを、誰かから、「それは事実かい、それとも幻想かい、・・・ 葉山嘉樹 「淫賣婦」
・・・それでもあの崖はほんとうの嫩い緑や、灰いろの芽や、樺の木の青やずいぶん立派だ。佐藤箴がとなりに並んで歩いてるな。桜羽場がまた凝灰岩を拾ったな。頬がまっ赤で髪も赭いその小さな子供。雲がきれて陽が照るしもう雨は大丈夫だ。さっきも一遍云ったの・・・ 宮沢賢治 「台川」
・・・東京は街の黄色い葉を落して強い雨降りでしたが。佐藤先生のところへ手紙を寄越して、色々気持の病的なところを訴えてきたそうです。体はみたところ肥って、陽に焼けてしっかりしたようだそうだけれど、神経がどうこう、気持がどうこうというわけで、そちらの・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・谷崎は大谷崎であるけれども、文章の美は古典文学=国文に戻るしかないと主張し、佐藤春夫が文章は生活だから生活が変らねば文章の新しい美はないと云っているの面白いと思います。しかし又面白いことは佐藤さんの方が生活的には谷崎さんのように脂こくはない・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫