・・・その結果、今のところきわめて素朴にしか語ることができない次第だけれども、それでも、この五年間には、すべての文学者が、それぞれに、何かを体得して来た。社会主義リアリズムとよばれる創作方法が、プロレタリア文学運動者たちの珍重するソヴェトわたりの・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・生活の達人たちは皆この原理を体得した人々である。河合栄治郎氏が、氏としての熱誠を傾けたこの論文の中で、若き時代に健全な人間性を取り戻すためには、従来の意味での形而上学的の理想主義の人生観を彼等の中に確立させてやらねばならないと主張しておられ・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・だけでは何にもならない、真に知ることが、体得することが、重大なのだ。――これは古い言葉である。しかし私は時々今さららしくその心持ちを経験する。 ――誰でも自分自身のことは最もよく知っている。そして最も知らないのはやはり自己である。「汝自・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
・・・そうしてこの禅の体得ということも、日本文化の一つの特徴として、今でも世界に向かって披露せられている点である。そうしてみると、これらの三つの点だけでも、応永時代は延喜時代よりも重要だと言わなくてはなるまい。 もっとも、この三つの点以外であ・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・本質への追求は感覚的な美と独立して存在することができない。体得した真理は直ちに肉体の上に強い力と権威とをもって臨むごときものでなくてはならぬ。すべてが融然として一つである。 千数百年以前にわが国へ襲来した仏教の文化はまさにかくのごときも・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
出典:青空文庫