・・・僕は喉頭結核の上に腸結核も併発している。妻は僕と同じ病気に罹り僕よりも先に死んでしまった。あとには今年五つになる女の子が一人残っている。……まずは生前のご挨拶まで」 僕は返事のペンを執りながら、春寒の三島の海を思い、なんとかいう発句を書・・・ 芥川竜之介 「追憶」
・・・ その家は貧しくて、かぜから肺炎を併発したのに手当ても十分することができなかった。小さな火鉢にわずかばかりの炭をたいたのでは、湯気を立てることすら不十分で、もとより室を暖めるだけの力はなかった。しかし、炭をたくさん買うだけの資力のないも・・・ 小川未明 「三月の空の下」
・・・或は、その病気を一層重くさせ一層余病を併発させ、命を危くさせようとあらゆる手段を尽すのが、人道の行為であろうか。これに対する答えは子供でも知っている。日本その他二つの同盟国が、国際間に取った所業は、真剣な平和建設の努力を横紙破りの暴力で破壊・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫