・・・て、その下に安倍さんや何か固まって話してね、お互い同士は友達ですから、こういうことはどうなんだろうね、たとえば天皇はこういうときどういう言葉を使われるのだろうね、というようなことをお互いの間でいうと、侍従か何かがそこにいて、天皇に適宜にとり・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・嫡子六丸は六年前に元服して将軍家から光の字を賜わり、光貞と名のって、従四位下侍従兼肥後守にせられている。今年十七歳である。江戸参勤中で遠江国浜松まで帰ったが、訃音を聞いて引き返した。光貞はのち名を光尚と改めた。二男鶴千代は小さいときから立田・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・それで今のような、社会民政党の跋扈している時代になっても、ウィルヘルム第二世は護衛兵も連れずに、侍従武官と自動車に相乗をして、ぷっぷと喇叭を吹かせてベルリン中を駈け歩いて、出し抜に展覧会を見物しに行ったり、店へ買物をしに行ったりすることが出・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・これは祖先以来の出入先で、本郷五丁目の加賀中将家、桜田堀通の上杉侍従家、桜田霞が関の松平少将家の三家がその主なるものであった。加賀の前田は金沢、上杉は米沢、浅野松平は広島の城主である。 文政の初年には竜池が家に、父母伊兵衛夫婦が存命して・・・ 森鴎外 「細木香以」
・・・膳部を引く頃に、大沢侍従、永井右近進、城織部の三人が、大御所のお使として出向いて来て、上の三人に具足三領、太刀三振、白銀三百枚、次の三人金僉知らに刀三腰、白銀百五十枚、上官二十六人に白銀二百枚、中官以下に鳥目五百貫を引物として贈った。 ・・・ 森鴎外 「佐橋甚五郎」
出典:青空文庫