・・・新設される四十二の発電所は二百二十億キロワット時の電力を生産各部門に供給するだろう。大きな西日が鋤をひっぱる馬の背とケシの花とを越えて静かに彼方の地平線に沈もうとする曠野に、耕作機械トラクターが響き出す。うねくる個人耕作の細い畦が消えて、そ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・の提案の半面で、大衆というものを文化上の被供給者、被統制的な立場に置いて見ているのである。作家を軍人、官吏、実業家の活動中心と結びついたものとして文化的にも上位にあるものとして考えているのである。何か役人風な見方がここには感じられる。 ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・作家と読者との関係は単に需要者・供給者の関係ではない肉親的交流において見られたのであった。 再び文学の大衆化が文壇に論ぜられるに当って、大衆の文化的発展の諸要因が無視されると共に、作家との関係では、作品の給与者、被給与者としての面が強調・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ こういう応急的な思想性の需要と供給との現象が、現在の文化面を忙しく右往左往しているのであるが、日本ではおそらく明治開化の時代にも、日露戦争後の社会問題擡頭期にも、第一次欧州大戦後の社会科学への関心の高まった時代にも、今日見られると同じ・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
・・・ 三里ほど山中の、至って交通の不便な部落から、切石、鉱石、蒔炭の類を産するので、町への搬出を手軽く出来るように、町からそっちへ売りこむ日用品をも楽に供給するために、出来たことなのである。 ずいぶん粗末な小屋掛け同様の建物が出来、むこ・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・当時の文筆家は、実際に新興ブルジョアジーが最も必要とした文明開化の輸入者、供給者、啓蒙者であった。所謂要路の大官の開化思想の方向とその実行の内容を暗示し、指導し得る立場にあった。これ等の人々は、若いブルジョア日本の建設期に、文化的な活動と文・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・しかし、まだ忙しいモスクワ市民の需要と供給の比率は均衡からはるかに遠い。 その一方にこういう事情がある。燕麦の収穫が一九二九年は多くなかった。日本女は、今日び馬を食わせるのに云々という御者の言葉は、だからそれ自身としては十分信じ得る。そ・・・ 宮本百合子 「モスクワの辻馬車」
・・・英国がこれらを供給しなければならぬ。 それ故労働組合運動は経済単位としての英国国家組織のなされる提案に密接な関係をもって従わなければならぬ。」ソラ、巡査が手をあげたぞ!今のうちだ。つっきれ! が、日本の新聞までそ・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・アフリカは奴隷を供給した。何百、何千の奴隷を、船荷のようにして。しかし人身売買はかなり気の咎める商売である。それには何か口実がなくてはならない。そこでニグロは半ば獣だということにされた。また Fetisch という概念がアフリカの宗教の象徴・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
・・・ 根に対する情熱を鼓吹し、その根の本能的に好むところの土壌のありかを教え、そうして幾千年来堆積している滋養分をその根に供給してやるのが教育の任務である。特に大学教育の任務である。 大学が植木鉢に堕するか否かは、人の問題であって制度の・・・ 和辻哲郎 「樹の根」
出典:青空文庫