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・・・例の椀大のブリキ製の杯、というよりか常は汁椀に使用されているやつで、グイグイあおりながら、ある者は月琴を取り出して俗歌の曲を唄いかつ弾き、ある者は四竹でアメリカマーチの調子に浮かれ、ある者は悲壮な声を張り上げてロングサインを歌っている、中に・・・
国木田独歩
「遺言」
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・・・木拾いの歌うような俗歌をそらんじて、おりおり低い声でやっています。 ある日私は一人で城山に登りました、六蔵を連れてと思いましたが、姿が見えなかったのです。 冬ながら九州は暖国ゆえ、天気さえよければごく暖かで、空気は澄んでいるし、山登・・・
国木田独歩
「春の鳥」