・・・まだまだ特殊な目で見られているのだから、どうしても、一方には責任を負わないことをそのたのしさとして求めている両性の遊びがあり、まともな結婚の対象ということになると、それらの友達の間からではなく、もっと保守な面から選ばれるという奇妙な現象が近・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・総選挙という方法は民主の方法であろうが、その方法を通じて反映された今日の日本の現実は、どんなに国内の保守の権力が根づよく、組織的で、日本が民主化して行こうとする進路をふさいでいるかという事実が、外人記者の観察にもはっきり語られたのである。総・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・事情に向っての闘争の過程で自己を拡大するため、集団的、階級的な形態で自我が認識されなければならないという事実との間に、面倒な理解の混乱が生じ勝ちであり、後者に反撥して自我を主張することから、逆に、最も保守的なものへころがり込む場合さえあるの・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・ こういう一事でもわかるように、大正初頭の女学校の気風は、本当に保守的であったし、個性の特色をよろこばなかった。私の卒業した官立の女学校は、所謂品のよい、出来のよい画一にはめこまれていて、個性のつよさを愛さなかったから、当時の女学生とし・・・ 宮本百合子 「女の学校」
・・・ 保守的な女のひとも、先ず女が自分の責任を十分知らなければ云々、と云った。その場合意味されていることは、要求するより先に課せられた義務を果せ、という内容づけであった。そして、彼女たちは課せられている義務が女にとってどんな苦しいものか或は・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・立候補した婦人たちは保守的な男女の一票をとり逃すまいとしてどんなに「女はどこまでも女らしく」と強調しただろう。はた目に気の毒なほど強調して「女こそ女の苦しみがわかるのだから」と演説した。そして、当選して、開院式の折、またその他の場合とかく「・・・ 宮本百合子 「「女らしさ」とは」
・・・第一次大戦の前後に書かれた作品で、イギリスの人たちが、十九世紀からもちつづけて来た家庭、結婚についての形式的な習慣に、新しく深いヒューマニティーの光を射こんだ作品であった。保守的な宗教家として正統的なものの考えかたをしている老牧師の娘である・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・Il Santoあたりであらわしていた、カトリック教に同情した心持を寺院の側からの抑圧を受けて、いっそう保守的にあらわそうとして、死ぬる前に一の小説を書いた。しかしそれはカトリック主義のようになって、芸術上の品位は前の作より下がっている。な・・・ 森鴎外 「文芸の主義」
・・・ 以上は保守の見解である。わたくしはこれを首肯する。そして不用意に古言を用いることを嫌う。 しかしわたくしは保守の見解にのみ安住している窮屈に堪えない。そこで今体文を作っているうちに、ふと古言を用いる。口語体の文においてもまた恬とし・・・ 森鴎外 「空車」
・・・家康自身はかならずしも時代に逆行するつもりはなかったかもしれないが、彼の用いた羅山は明らかに保守的反動的な偏向によって日本人の自由な思索活動を妨げたのである。それが鎖国政策と時を同じくして起こったのであるから、日本人の思索活動にとっては、不・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫