・・・するとベルリン大学に居る屈指の諸大家は、一方アインシュタインをなだめると同時に、連名で新聞へ弁明書を出し、彼に対する攻撃の不当な事を正し、彼の科学的貢献の偉大な事を保証した。またアインシュタインは進まなかったらしいのを、すすめて自身の弁明書・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・事実は保証しない。 鯉やすっぽんのほかに、ブルフログを養殖しようという話もあったと記憶しているが、結局おやめになったと見える。もしほんとうに、あすこに、大きなブルフログが繁殖して、大きな声でも上げているのだと、少なくも何事かを考えさせら・・・ 寺田寅彦 「池」
・・・ことに承れば昨日も何か演説会があったそうで、そう同じ催しが続いてはいくらあたらない保証のあるものでも多少は流行過の気味で、お聴きになるのもよほど御困難だろうと御察し申します。が演説をやる方の身になって見てもそう楽ではありません。ことにただい・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・――今の写生文家がここまで極端な説を有しているかいないかは余といえども保証せぬ。しかし事実上彼らはパノラマ的のものをかいて平気でいるところをもって見ると公然と無筋を標榜せぬまでも冥々のうちにこう云う約束を遵奉していると見ても差支なかろう。・・・ 夏目漱石 「写生文」
・・・果して然らんには甘んじて之に従い之に謀る可しと雖も、今の世間の風潮に於ては其保証頗る疑わし。我輩は婦人の為めに謀り、軽々女大学の文に斯かれずして自尊自重、静に自身の権利を護らんことを勧告するものなり。 又云く、古の法に女子を産めば三日床・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・あるいは学校費用の一点について官私を比較すれば、私立の方に幾倍の便利あること明らかに保証すべし。されば人民の政は、ただ多端なるのみに非ず、また盛大有力なりといわざるべからず。 右の次第をもって考うれば、人民の世界に事務なきを患るに足らず・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・しかし大鷲の意見と僕の意見と往々衝突するから保証は出来ない。 三橋に出ると驚いた。両側の店は檐のある限り提灯を吊して居る。二階三階の内は二階三階の檐も皆長提灯を透間なく掛けて居る。それでまだ物足らぬと見えて屋根の上から三橋の欄干へ綱を引・・・ 正岡子規 「熊手と提灯」
・・・日本は今、非常な困難とたたかいながら、一日も早く民主の国となり、平和の保証された国となり、世界に再び独立国として登場するための努力をはじめております。 これからの私たち日本人は、世界に恥しくない市民として、どういう風でなければならな・・・ 宮本百合子 「新しい躾」
・・・という利口ぶったいいまわしに抵抗しなければ、どんな幸福も保証されません。日本の新聞は、なんと恥しらずに戦争挑発をしているでしょう。アメリカの科学者たちが、アインシュタインをはじめとして、人類の平和のための原子力の使いかたを主張していることは・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・そうしてこの祖父が生きていたことは、この界隈の老人連に対して、生命の保証のように感じられていたに相違ないのです。その祖父が死んだ、それがこの老人連にどんな印象を与えたか、――彼はやっとそこに気づきました。彼が物心がついた時には祖父はもう七十・・・ 和辻哲郎 「土下座」
出典:青空文庫