・・・日本文学の歴史において一つの画期を示したこの自我の転落は、当事者たちの主観から、未来を語る率直悲痛な堕落としては示されず、何か世紀の偉観の彗星ででもあるかのような粉飾と擬装の下に提示され、そこから、文学的随筆的批評というようなものも生じた次・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
・・・ひとくちに人の列と云えばそれまでだが、列をなす一人一人に二つの眼と口と心と生涯とがあるのだと思えば、おそろしき偉観と思えるのである。〔一九四〇年十月〕 宮本百合子 「列のこころ」
・・・もしこの問題が、連鎖反応式に中央アジアのいくつかの遺蹟の発掘をひき起こしたとしたら、やがて千四百年前の中央アジアの偉観がわれわれの前に展開してくるであろう。 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫