・・・「◎偏狭非文明的なるビジテリアンを排す。マルサスの人口論は、今日定性的には誰も疑うものがない。その要領は人類の居住すべき世界の土地は一定である、又その食料品は等差級数的に増加するだけである、然るに人口は等比級数的に多くなる。則ち・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・無論は、女性が昔の偏狭な、恥辱的な性的差別に支配、圧迫された生活から脱して、一箇の尊敬すべき独立的人格者として生活すべき事を他人にも我にも承認させた。 人として更たまった、身も震うような新鮮な意気と熱情とを以て人として生き抜こう為に、箇・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・章子は一応、「そんなの偏狭さ」と云うに定っているから。 翌々日は日曜日であった。蒔絵を観るため、彼等は高台寺へ行った。蒔絵のある建物が裏山の中腹にあって、下から登龍の階と云うのを渡って行くようになっていた。遠洲の案とかで、登・・・ 宮本百合子 「高台寺」
・・・一般的に、農民作家の地方偏重の傾向、都会への偏狭さが屡々批判されるが、この作家の言葉にもよくあらわれている。 一九二九年の、激しい農村の階級闘争、富農征伐のとき、どちらかというと、右翼的誤謬をもち易い農民作家団の中に「工業化主義者の職場・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・保守的 退嬰的 非進歩的 非理知的 偏狭固陋であればある程、それだけ正しいのである。大言壮語家! p.281○理性よ、下れ! ロシアは矛盾なく 公言される信条である。「人はロシアを理性をもってではなく、信仰をもって理解しなければならぬ」・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・同志貴司は同志小林の性格における宿命的特徴のように「偏狭であった」ということを強調し、さながら同志小林の日和見主義との妥協ない闘争は、その「偏狭さ」の現れであったかのような印象を読者に与えている。「気質」というようなものをただ抽象して固・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・、「鼻っ柱」のつよさ、「強がり」、「偏狭性」、「馬車馬的な骨おしみ知らず」、「田舎者の律気」などに還元している。そして「かれが積極的になる時、飛躍する時、かれの性格の唯一の欠点である偏狭性が跳梁した」というに至って、誤謬はデマゴギー的性質に・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
・・・ このような用語が許されるならば、前者は感情的偏狭により、後者はその殉情的 extravagance により、倶に、心に迫る芸術的真実の生命を欠いているように思われるのでございます。或る場合には、他の作品に於ても認められるこれ等現象の根・・・ 宮本百合子 「野上彌生子様へ」
・・・彼女は、女性の理屈のない執着強さ、一つものを見始めると傍を見られない偏狭さを日頃から嫌っていました。彼女にとって職業を持つことは、意地ではありません。最もよいと思う人間の生活を創る為なのだから、彼女の理性は、更に大きな要求、子と彼女自身、又・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・寧ろひどく偏狭な、神経質な、左大臣の官服の下に猿のような体のあることを想わせる男ではなかったた。小さく窪んだ二つの眼を賤しく左右に配って、せかせか早口な物の云いようをしたようにも想われる。 彼の住居は八條にあった。内裏までかなり遠い。冬・・・ 宮本百合子 「余録(一九二四年より)」
出典:青空文庫