・・・ 鎖国は、外からの刺戟を排除したという意味で、日本の不幸となったに相違ないが、しかしそれよりも一層大きい不幸は、国内で自由な討究の精神を圧迫し、保守的反動的な偏狭な精神を跋扈せしめたということである。慶長から元禄へかけて、すなわち十七世・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・しかし生活を全的に展開せしめようとするものは、この種の偏狭に安んじてはならない。これ偶像破壊者の危機に対する最第一の警告である。 予は自ら知れる限りにおいて生まれながらの反逆者であった。小学の児童としては楠正成を非難する心を持ち、中学の・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・これまでは調和がとれていた故に現われなかった性質が調和の破れるとともに偏狭に現われて来た。自分の内には、自分の運命に対する強い信頼が小供の時から絶えず活らいていたけれども、またその側には常に自分の矮小と無力とを恥じる念があって、この両者の相・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
・・・しかれども豪壮を酒飲と乱舞に衒い正義を偏狭と腕力との間に生むに至っては吾人はこれを呪う。 吾人はこの例を一高校風に適用し得べしと思う。吾人の四綱領は武士道の真髄でありソシアリティの変態であろう。しかれどもこの美名の下に隠れたる「美ならざ・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫