・・・当時の文学の混乱もこの頃云わば底をついた形となって、漸々観念的な不安に停滞することも、荷風の境地に寄食することも許すべきでないとする一種の見解、気力が生じ始めた。作家の精神と肉体とは現実に向って先ず活々と積極性をもって動き出さなければ文学に・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・の自然な姿、その精神と肉体との過程としての人生とその芸術を考えたとき、たとえ、私たちの闘うべき封建性にたいしてであったとしても、単に反措定的存在に止るということは、それ自体一つの闘われるべき安易さへの停滞ではないでしょうか。横光利一・小林秀・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・オペラとバレーがどしどし新形式を発見せず、主題においても停滞しているのに第一次大戦後からより近代的なアメリカの興行資本家によって提供されるレヴューが派手にドンドンのびてゆくのはブルジョア社会の崩壊期に入った文化の必然な現象なのだ。 ソヴ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・けれども人類の歴史は常に進歩に向って動いて来ているので、その間に生じる鋭く深刻な矛盾で、当面の生活にどんな障害や停滞や退歩がおこり、生活の低下が生じたとしても、私たちがそれをのりこえてゆく努力の方向は不変に進歩への方角の探究でなくてはならな・・・ 宮本百合子 「その先の問題」
・・・そのために大局からみれば梅原龍三郎をかれの世界へ停滞させて、とりまきにおだてさせておく事情になるし、より新しい美術の生れて来る生活感情へのもだえを消し批判と新しい創造力をあいまいにする。 例えばピカソの画についてどれだけの人がピカソの世・・・ 宮本百合子 「ディフォーメイションへの疑問」
・・・という言葉を、本当に生活のなかから湧きいでた女性の健やかな美感への成長として実感してゆくのも来年の事だし、こんなに炭の不足している一冬を、互に協力して体も丈夫に仕事も停滞させず過しぬいたという経験が、社会的な辛苦に対して女性をはっきり目ざま・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・ヒューマニズムの理論的闡明に附随している不便や現実の展開の局限などから生じた停滞が、この傾向を助長させているのであろうし、又限界をひろくして観察すれば、そういう傾向にいつしか導き込む安易さが昨年あたりからヒューマニズム提案がなされた初期から・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
出典:青空文庫