・・・しがない日傭人の兵隊たちは、戦争よりも飢餓を恐れて、獣のように悲しんでいた。そして彼らの上官たちは、頭に羽毛のついた帽子を被り、陣営の中で阿片を吸っていた。永遠に、怠惰に、眠たげに北方の馬市場を夢の中で漂泊いながら。 原田重吉が、ふいに・・・ 萩原朔太郎 「日清戦争異聞(原田重吉の夢)」
・・・強請して小規模で分散的な副業に止めておこうとする理由は「集団作業の心理状態には被傭人の気持が多く、共同作業場あるいは家庭工業には農業精神が横溢している」とされているのである。 これまでも、日本の女は、実に労を惜しまず、雑多な歴史の荷・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ 二人の間にはそれから満鉄傭人のこまかい等級差別について話がすすんだらしく、カーキ色が、「二円、三円と一つずつ上って六円までつくからね」と云った。「ふーむ、それが大きいですね」「結局おんなじこってすよ、どこへ行ったって残・・・ 宮本百合子 「東京へ近づく一時間」
・・・に就いて、どんな階級的批判をも加えず、書立てているのも社民・労農大衆党と等しく、民主主義者と云うものはブルジョアの使傭人であることをなによりも雄弁に示している。これ等の実例でも明かのように、文化芸術に於けるファッシズムは決して或る限界線の向・・・ 宮本百合子 「ブルジョア作家のファッショ化に就て」
出典:青空文庫