・・・こんにち、政治の優位性ということを苦しいまでに素朴に解釈している部分がある。そのずれで苦しんでいるのは熱田五郎氏ばかりではない。その政治の貧困さを補充してゆくためには、民主的な政治そのものの具体的な成熟が期待されると同時に、文学は文学の側か・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・際して婦人の特色のように見える以上のような現象の説明に、それは芸術神たちは女だから男を御贔屓さというけれども、そもそも芸術神を三人とも女性で象徴したことのうちには、神をもわが手でこしらえた男の社会上の優位や、女というものを自分の芸術的欲望の・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・ 文学の仕事、文学者の任務が、大衆の指導にあるという自覚と、そのことで大衆より経済的にも優位におかるべき筈であるという、芸術至上的な自己評価の習慣は、ブルジョア文学が実際は大衆の生活感情とのつながりを失っても猶作家の心に残像としてのこっ・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・ 進んで筆者は日本におけるプロレタリア文学運動の新たな課題としてわれわれの前にある政治の優位性の問題ならびに組織活動と創作活動の弁証法的統一の問題にふれている。同盟内でも多くの理解の不足を示し、また敵の攻撃が集中されたこの重大な問題につ・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・文学における政治の優位ということは文学運動と作家とを文化上の経済主義にしたがわせ、そのいうことをきかせるということではないと思います。文学のもっている浸透的で恒久性のある革命的力が理解されてよいと思います。 現在、反動権力と反動文化の・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・蔵原惟人、この著の筆者などの諸論中に、方向においては正しく而も哲学と芸術との特殊性における分別においては明徹を欠いて示されていた世界観と創作方法との相関関係に就ての点、政治の優位性と芸術の特殊性との具体的・現実的究明等に関する諸問題の理解は・・・ 宮本百合子 「『文芸評論』出版について」
・・・文学が階級の文化生産物とならなければならないということは、政治の優位性ということについてはもっと具体的に研究されていいのではないでしょうか。つまり文学というものに連関して私たちの感情の中にとかく刺戟されやすいブルジョア的な個人的ヒロイズムや・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・せられるし、議会傍聴というようなことが、女の日常にとって何か特別なことと思われていて、来ている婦人が皆それぞれのつてや背景を脊負っていて、それをまた女の狭い未訓練な社会感情のなかで自分に許されるはずの優位のように我ともなく思ったりしていると・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・その相互的な関係で、話しての生活的なものも試されて行くわけなのだけれども、ラジオには、いきなり聴きての賛成も不賛成も表示されないというところで、送り出す側は自身の優位に却って足もとを掬われている傾きがある。 適当な場合、適当な表現で大き・・・ 宮本百合子 「ラジオ時評」
出典:青空文庫