・・・時節柄当局の神経は尖鋭となっていたので、ついにこの不穏の言動をもって、人心を攪乱するところの沙門を、流罪に処するということになった。 これは貞永式目に出家の死罪を禁じてあるので、表は流罪として、実は竜ノ口で斬ろうという計画であった。・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
一 永遠の緑 この英国製映画を同類の米国製レビュー映画と比べると一体の感じが随分ちがっている。後者の尖鋭なスマートな刺戟の代りに前者にはどこかやはり古典的な上品な滋味があるような気がする。 この映画の・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(5[#「5」はローマ数字、1-13-25])」
・・・彼らの中の古老は気象学者のまだ知らない空の色、風の息、雲のたたずまい、波のうねりの機微なる兆候に対して尖鋭な直観的洞察力をもっている。長い間の命がけの勉強で得た超科学的の科学知識によるのである。それによって彼らは海の恩恵を受けつつ海の禍を避・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・に書かれているブルジョア婦人雑誌に対する態度は、プロレタリア文化の尖鋭な伝播者・組織者としてのわれわれの刊行物と、ブルジョア文化攻勢の具体化としての婦人雑誌との相互的関係を、十分弁証法的に、レーニン主義的に把握しているとはいえぬ。「発刊の言・・・ 宮本百合子 「婦人雑誌の問題」
・・・本のブルジョア文学がなぜ瘠馬であるか、ゲーテはなぜゲーテであり得たのか、その歴史的必然性を、プロレタリアの世界観のみが把握しているところの唯物史観的国際性によって検討し、その検討の階級的精密さ、科学的尖鋭さが、ひるがえって今日のわれらの現実・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・がもう新鮮な文化的芽生えは持っていないにしても、まだ広汎に存在しているところでは、文壇がハッキリ二つに分れ、何とかして生き長らえようとするブルジョア文壇、大衆の意識のハッキリしてくるにつれ、階級闘争が尖鋭化してくるにつれて、力を磨き、根を張・・・ 宮本百合子 「文壇はどうなる」
・・・次第に尖鋭になる階級闘争を、ピルスーヅスキーの軍国主義独裁の政治で圧えつけている。 そういう社会的状勢は知っているが、どうもソフト帽の若者にゴマノハイをやられる気にはならない。黙ってドンドン、ステーションを出ると、今度は車寄せのところで・・・ 宮本百合子 「ワルシャワのメーデー」
出典:青空文庫