・・・で、時々目がさめたように、パッと羽を光らせるが、またぼうとなって、暖かに霞んで飛交う。 日南の虹の姫たちである。 風情に見愡れて、近江屋の客はただ一人、三角畑の角に立って、山を背に繞らしつつ彳んでいるのであった。 四辺の長閑かさ・・・ 泉鏡花 「みさごの鮨」
・・・彼らは闇のなかでもそのありかをほの白く光らせる。 そこを過ぎると道は切り立った崖を曲がって、突如ひろびろとした展望のなかへ出る。眼界というものがこうも人の心を変えてしまうものだろうか。そこへ来ると私はいつも今が今まで私の心を占めていた煮・・・ 梶井基次郎 「闇の絵巻」
・・・瓦斯の焔を石灰に吹きつけて光らせるのはドラモンド灯であるが、白炭の強い光を喜んだ昔の人は偶然に一種のドラモンド灯を知っていた訳である。 埋火 炭火を灰で埋めれば酸素の供給が乏しくなるから燃えにくくなって永く保ってい・・・ 寺田寅彦 「歳時記新註」
出典:青空文庫