・・・いつでもきみだけとけた靴のひもを引きずってみんなのあとをついてあるくようなんだ、困るよ、しっかりしてくれないとねえ。光輝あるわが金星音楽団がきみ一人のために悪評をとるようなことでは、みんなへもまったく気の毒だからな。では今日は練習はここまで・・・ 宮沢賢治 「セロ弾きのゴーシュ」
・・・然るに今日は既にビジテリアン同情派の堅き結束を見、その光輝ある八面体の結晶とも云うべきビジテリアン大祭を、この清澄なるニュウファウンドランド島、九月の気圏の底に於て析出した。殊にこの大祭に於て、多少の愉快なる刺戟を吾人が所有するということは・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ふき子の内身からは一種無碍な光輝が溢れ出て、何をしている瞬間でもその刹那刹那が若い生命の充実で無意識に過ぎて行く。丁度無心に咲いている花の、花自身は知らぬ深い美に似たものが、ふき子の身辺にあった。陽子は、自分の生活の苦しさなどについて一言も・・・ 宮本百合子 「明るい海浜」
・・・何処までも 繊細に 何処までも 鋭く而も大らかに 生命の光輝を保つことこそ人間は、芸術は甲斐ある 精神の果実だ。其処に 日が照り 香気がちり朽ちても 大地に種を落す命の ひきつぎて となり得るのだ。私・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・ 光輝ある「十月」ソヴェト政権の確立とともに、ロシアの農民ははじめて土地を自分のものとした。 ┌───────┐ │土地を農民へ!│ └───────┘ この歴史的なスローガンは、一九一七年の二月革命の当時、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ このような楽しみのほかに、私には上元気の午後三時頃、酔ったようになって盛夏の空と青葉の光輝とに見とれる悦びがある。東京にいて、八月の三時は切ない時刻だ。塵埃をかぶって白けた街路樹が萎え凋んで、烈しく夕涼を待つ刻限だ。ここも暑い。日中の・・・ 宮本百合子 「この夏」
・・・或時は、俄に山巓を曇らせて降り注ぐ驟雨に洗われ、或時はじめじめと陰鬱な細雨に濡れて、夏の光輝は何時となく自然の情景の裡から消去ったようにさえ見えます。瑞々しい森林は緑に鈍い茶褐色を加え、雲の金色の輪廓は、冷たい灰色に換ります。そして朝から晩・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・自分の欲求や野心から発する息苦しい熱ではなくて、それ等を極みない白銀の雰囲気の裡に、たとい瞬間なりとも消滅させる静謐な光輝である。秋とともに在って、私は無私を感ずる。人と人との煩瑣な関係に於ても、彼我を越えた心と心との有様を眺める。心が宇宙・・・ 宮本百合子 「透き徹る秋」
・・・そこにこそ、社会主義的生産の光輝がある。 プロレタリア文学が、ソヴェトの生産経済計画と緊密に結合したと云っても、主としてそれは作品の主題、内容に表現されるだけだ。文学的生産は、やっぱり個人個人勝手に、すきな時、自分が発見した材料によって・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・互が、最も希望と将来の光輝とを期待することである丈、種々に考慮しなければならない点が、実際問題となって起って来ます。それによって、幾年かの婚約を先ず予備するもの、或は、双方の重要な条件が相容れないためもう最後の一歩と云う点で失望に終るもの等・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫