・・・つまり新聞雑誌には書かない最も悪いジャーナリストもあれば、新聞雑誌に書いてもジャーナリズムの弊には完全に免疫された人もありうるのである。この事に関する誤解が往々正常なる科学の普及を妨害しているように見える。これは惜しむべきことである。・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ 人生の、あらゆる不幸、あらゆる悲惨に対して殆んど免疫になってはいた吉田であった。不幸や悲惨の前に無力に首をうなだれる吉田ではなかった。どんな困難な境遇に立っても客観的な立場を守って、的確な判断と作戦とを誤らなかった彼ではあった。彼の心・・・ 葉山嘉樹 「生爪を剥ぐ」
・・・ 空気の清純な田舎に育った青少年は結核菌に対して免疫が体内に出来ていない。生れたままの美しい肉体は病菌には非常にもろい。田舎の子は丈夫だ。田舎暮しからみたら東京の生活は比較にならないほどいい、と云われる言葉は、都会の空気に代々馴れて、結・・・ 宮本百合子 「若きいのちを」
出典:青空文庫