・・・その上意地悪く、鼻めが沢井様へ入り込みますこと、毎日のよう。奥様はその祈の時からすっかり御信心をなすったそうで、畳の上へも一件の杖をおつかせなさいますお扱い、それでお米の枕許をことことと叩いちゃあ、といいますそうな。」 ・・・ 泉鏡花 「政談十二社」
・・・は二月三月は殊勝に消光たるが今が遊びたい盛り山村君どうだねと下地を見込んで誘う水あれば、御意はよし往なんとぞ思う俊雄は馬に鞭御同道仕つると臨時総会の下相談からまた狂い出し名を変え風俗を変えて元の土地へ入り込み黒七子の長羽織に如真形の銀煙管い・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・を見ていろいろ興味を感じたことの中でも特におもしろいと思ったことは、日本各地の植物界に、東亜の北から南へかけてのいろいろな国土の植物がさまざまに入り込み入り乱れている状況である、これも日本という国の特殊な地理的位置によって説明され理解さるべ・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・されども人間が世に居て務むべきの仕事は、斯く簡易なるものにあらず、随分数多くして入り込みたるものなり。 大略これを区別すれば、第一に一身を大切にして健康を保つこと。第二に活計の道、渡世の法を求めて衣食住に不自由なく生涯を安全に送ること。・・・ 福沢諭吉 「家庭習慣の教えを論ず」
出典:青空文庫