・・・ 斯ういう事情があっても、良人が自分を虐待するという為に訴訟し弁護され、勝訴するのは、公正な事でございましょうか? C先生 私は、人間の魂に余り「知」の不足する事を涙とともに悲しまずには居られないのでございます。 此の事件を・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 商人の公正な商売道徳が新しく立てられなければならないことが云われて、それはそのとおりなのだけれど、それだけ一方的に、モラルの面から強調されても商人の身になれば云いたいことがあるのだろう。商人も今日の社会の新しい状態に入り切れずにいるし・・・ 宮本百合子 「主婦意識の転換」
・・・それは公正で紳士的だと云うのを表看板にしているイギリスの第一流新聞タイムスが、書いてることを見たって分る。そのことも階級的立場からはっきり知るのだ。 ――ほかに鬱はらしのしようがなかったんだな、きっと。 ――それも一つだ。その時分、・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・バルザックの偉大さにしても、西欧のリアリズムにしても、バルザックが彼の時代のフランス・ブルジョア社会の限界・個性の限界としてその作品にくっきり映している歴史性は、公正な評価をもって見られるべきである。こんにちの歴史ではより明確にされている社・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・八月八日に「はじめて面会を許されて弟に会いましたが、そのとき立ち会った木村検事にわたしが、公正な立場でやっていただきたいというと『宮原係の検事としてききずてならない』と酒を飲んだように顔面を紅潮させて、両脇腹に手をあてがって『でっちあげるの・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・一つの書いたもののなかから、偶然の誤記を機会に、書いてあることとはまるで方向のちがった結論をひき出して、自身のコンプレックスを展開することは、公正でないし、文学というものの客観的な真実を尊重する本質もふみにじっている。『近代文学』十月号・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・ 法律は公正であると信じこむように教育されているが、階級社会で実際に法律がどうつかわれるかという実例はサッコ・バンゼッティの事件ばかりではない。五月三十日の東京人民大会でとらえられた八名の若い人たちの罪にしても、いろいろ考えさせる。新聞・・・ 宮本百合子 「動物愛護デー」
・・・そしてそのことによって進歩的読者に社会主義の具体的図絵を与え、党の意義を普及しつつある作家をその事実にたって公正に評価することが他の党員作家にとって有害であるということは理解しにくいことです。文学における政治の優位ということは文学運動と作家・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・が、「放送効果の立場よりする聴衆の必然性の吟味或は社会的公正、文化的妥当の見地より指導方針の検討が加えられなければならない。」そして、官営である日本の放送事業は、個人経営のアメリカなどとは違う。「その組織経営の優秀性は」「世界各国の放送事業・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・地球上のあらゆる女性の真情と、沈着公正な精神を持つあらゆる雄々しい男性の希望とをこめて、二度と戦争なき世界を創ろうとする熱意に充ちているのである。第一次大戦、第二次大戦を凌いで来た、フランスの女性たちは婦人として最大の苦痛の中から起ち上って・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫